各社のハイブリッドシステムの違いをまとめた

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世の中にはハイブリッド車が増えてきましたが、その方式は沢山の種類があります。モーターやクラッチの数、シリーズやパラレルと言った分類で「A社のハイブリッドはB社と同じ(似ている)」などと評している記事が多いですが、大ざっぱで不正確だと思います。もうちょっと詳しい情報を配信したいと考え、この記事を書きました。

ただ、詳しい資料がほとんど見つからず、間違いが含まれている可能性もあります。間違いがありましたら教えてください。(たぶん、そこまで大きい間違いはないはずです)

トヨタ ハイブリッドシステム(THS-1,2,リダクション機構付き2)

2016/3/15追記:当初、リダクション機構付きTHS-2のことをTHS-3と表記していましたので修正します。

エンジンからの出力を遊星ギアを使って発電機と出力軸に分割させることで変速を行うシステムです。スプリット式とか、シリーズ・パラレル式とか言われます。エンジンからの動力がモーター動力と共に直接出力軸に落ちるルート(パラレルのルート)と、遊星ギアに接続された発電機によって電気に変換されたエネルギーがまたさらに動力用モーターによって運動エネルギーに再変換されるルート(シリーズのルート)と二つが存在するのでシリーズ・パラレルと呼ばれます。スプリットは分けるという意味なので、動力分割機構そのものを指して表現しているという事です。

動力分割は発電機への負荷を電気的に調整することで行われます。電気的にトルクと回転数を調整しているので電気式CVT(ECVT)などと呼ばれたりもしますが、2プーリー式のCVTが搭載されているわけではありません。

このシステムは各車メーカーのエンジニアから称賛されたらしいです。あらゆる場面で80点~90点の効率を叩きだす優れた仕組みです。

トヨタのハイブリッドシステムは皆このシステムを基礎としています。初代プリウスから基本的な構造はほとんど変わらず、小さい車から大きい車まで同様のシステムで動作しています。

搭載車種

プリウス、プリウスα、AQUA、カローラ フィールダー、VOXY、ノア、シエンタ、アクセラ(マツダ)

メリット

  • 低速から高速域まで、ストップ&ゴーが多発する場面から巡航が多い場面まで、あらゆる場面でまんべんなく高い効率をキープする優等生
  • 遊星ギアの導入によって多段ATより重量を軽くし、容積もコンパクトになっている
  • システム自体がシンプルで信頼性が高いと思われる
  • エンジン回転数の決定にかなりの自由度が与えられ、エンジンを効率が良い領域で動かしやすい

デメリット

  • 動力モーターの減速比は固定なので高速域ではモーター回転数が上がりモーターはほとんどアシスト出来ない(トルクが落ちる領域になる)
  • モーターを二つ積む分重量が重くなる
  • 発電機の軸をロックできないので、エンジントルクを100%出力軸に伝える方法が無い。このため高速巡航時でも発電機→動力用モータへのエネルギーフローは発生してしまい、変換時のエネルギーロスが常に発生する
  • 出力軸側にクラッチがないので、停車中にエンジンが始動すると若干のトルクが出力軸に伝わって車が揺れる(大して気にならないですが…)

感想

優等生賞です。

優れたシステムと思いますが、優等生すぎて面白味が無いと言うか…。燃費を良くするという点では非常に優れますが、一方で運転の楽しさという点ではあまり工夫がみられません。運転の楽しさと燃費の良さはトレードオフに近いのでしょうがないかもしれませんが…。

トヨタ ハイブリッドシステム リダクション機構付きTHS-2 + 4WD

4代目プリウスで採用された、リダクション機構付きTHS-2で4輪駆動を実現するシステムです。システム構成を見ると、リアホイールを駆動するためのモーターが追加されただけのように見えますが、プリウスの場合はこの「だけ」が高い完成度で実装されています。この後輪駆動システムはダブルウィッシュボーンとセットで実現されており、それでいて荷室容積も増加させているというトヨタのスペース効率を高めるお家芸が発揮された集大成といった感じのシステムです。

搭載車種

4代目プリウス、C-HR?

メリット

  • THSで4WDを実現できる

デメリット

  • 重量の増加
  • 後輪の出力はモーター出力に依存(FRに近くなるようなトルク配分は実現できない)…デメリットと言うほどでもないかも?

感想

正常進化賞

正常進化です。4WD車種の設定という目標を達成するために、最小限の変更で、かつ、システム自体も限りなくコンパクトに納めた優秀なシステムです。

THS-C + E-4WD

THSの出力軸にCVT(おそらく、トルコンもセット)を追加したのが一番の特徴です。さらに、後輪をモーター駆動する仕組みも追加されています。

THSでは出力モーターの変速比が固定で高速走行時にモーター回転数が上がり、トルクが落ちてしまうという問題がありましたが、それを解決?するための仕組みです。初期のエスティマハイブリッドに搭載されただけですぐに無くなりました。おそらく、CVTを追加してモーターのアシストが効くようにした分のプラスでもCVTを追加したことによるロス分をペイできなかったのではないかと思います(CVTは伝達効率のわるい変速機です)。

CVTの利点は無段階に変速比を変更できることにより、エンジンを常に効率よい領域で回せることです。しかし、THS-Cの場合はCVTを使わずともTHSシステム自体でエンジンの回転数はかなり自由に決定できる仕組みが実現できているので利点が重複している気がします。

それでも確かに、THSでは高回転になってくるとモーターのトルクが落ち込む領域に差し掛かってモーターのアシストが効きにくくなるが、代わりにエンジンに頑張ってもらうにしても発電機容量をも上げないと(つまりさらに大きなモーターを積まないと)いけないのでなかなか対応が難しいです。それを解決するためにモーター出力も可変の減速ギアをかまそうという話になったのだと思います。

目的から考えれば無段階とまではいかなくとも2段階変速トルコンAT程度で良かったのではないかと思うのですが、それでもCVTが搭載された背景としてはCVTの製造ノウハウが蓄積されているために新規に2段階トルコンATを作るよりは既存のCVTをモディファイして乗せたほうが良いという判断だったのかもしれません。

搭載車種

エスティマ ハイブリッド(初代)

メリット

  • THSの利点に加え、高速走行領域でトルクが不足するという問題を解消

デメリット

  • システムの複雑性が増したことによるコスト、重量、容積の増加、信頼性の低下
  • CVT導入によって伝達ロスが増える

感想

試行錯誤賞

ハイブリッドを本格的に普及させていくうえで、こういう試行錯誤はあって当然ですが、実際のメリットを考えるとまあ…微妙な構成のような気が。

トヨタ THS-2 + E-4WD

THS-Cの後、大型車種で採用されている方式です。THSにE-4WDを追加したシンプルな構成です。リダクション機構付きTHS-2 + E-4WDとほぼ同じ構成です。(開発はこちらの方が先です)

搭載車種

エスティマ、アルファード、ヴェルファイア、ハリアー

メリット

リダクション機構付きTHS-2 + E-4WDと同じ。

デメリット

リダクション機構付きTHS-2 + E-4WDと同じ。

感想

特に言うこと無い賞

2段変速式リダクション式ハイブリッドシステム、マルチステージハイブリッドシステム

レクサスで販売されている車種で採用されているシステムです。

THS-Cで「CVTでなくとも2段階式トルコンATを接続すればいいのでは」と述べましたが、それを実際にやったのが「2段変速式リダクション式ハイブリッドシステム」で、4段式トルコンATを接続したのが「マルチステージハイブリッドシステム」になります。

搭載車種

LS600h, GS450h(2段変速式)
LC500h(マルチステージ)

メリット

  • THSの利点に加え、高速走行領域でトルクが不足するという問題を解消
  • THSよりもさらにエンジン負荷・回転数制御が自由になる

デメリット

  • システムコスト、重量、容積の増加

感想

じゃんじゃん金つかっちゃえよ賞

THSはよく「高速走行領域が弱い」と評されます。これは、構造上高回転でトルクを発揮しにくい構成になっているからですが、計算すると100km/hあたりからこのトルクの落ち込みが始まるのであって日本市場ではそこまで困ることは無いです。実際、私が乗っていた3代目プリウスでも、高速度からの再加速は弱いとは思う物の実用上問題がある場面は皆無でした。

ですから、本方式で高速走行領域を改善したところで、実は日本国内で日本の法律を守って公道を運転している限りは正直あんまり嬉しいとは思いません。

じゃあ高速道路の制限速度が日本よりも速い海外では役に立つかというと、そりゃ立つと思いますが、そもそも高速道路をひた走るような用途ではハイブリッド車が苦手とする領域であって、長い距離を高速度で走り続けるようなシーンが多い国ではガソリン車の方が優位です。ちなみに、プリウスは高速巡航も燃費が良いですが、あれは優れた熱効率のエンジンを搭載しているから良いのであって、ハイブリッドシステムのおかげではありません。(その素晴らしいエンジンをアピールできないのがプリウスの悲しいところです。あまりその点を強調するとハイブリッド要らないじゃん、となりますから)

加えて、エンジン負荷制御の自由度が増しさらなる効率向上が期待できるという点も、トルコンを導入することによる非ロックアップ領域でのロス、ミッションにおける機械的なロスを考えるとそこまでのプラスは望めません。たぶん製造・原料コストはペイできないでしょうし、環境負荷という点で考えてもちょっと疑問な領域です。

はっきり言って、このマルチステージなんちゃらとかいうのは高級車で妥協の無い性能を追求したという「満足感」以外にユーザーが得られるものは無いと思います。

しかしながら我々庶民はレクサスを新車で買うような富裕層に感謝しなければなりません。なぜならば、メーカーが富裕層にじゃんじゃん金を使わせることによって普及車種では出来ないような試みが導入でき、それが最終的に普及価格帯の車の技術として反映されるからです。だから、もっと攻めまくった車種を開発し続けてもっともっと無駄金を使わせてほしいですね。それが日本経済の為にもなります。

ホンダ IMAハイブリッド

2016/3/15追記:図を微調整しました。

ホンダが3代目プリウスに対抗して
挑んだハイブリッドシステムです。シビックハイブリッド、インサイトを皮切りにそれなりに多数の車に搭載されました。システムとしては非常にシンプルなパラレル型ハイブリッドシステムです。

搭載車種

シビックハイブリッド、インサイト、CR-Z、フリードハイブリッド、

メリット

  • シンプルであるためにコスト、重量、容積を抑え、信頼性を高められる
  • 高速巡航時の効率が(ハイブリッドシステムの中では比較的)良い

デメリット

  • エンジン側にクラッチが無いのでEV走行ができない
  • 高速走行領域ではモーターアシストがすこし効きにくい
  • 停車時に走行用バッテリに充電できない

感想

付け焼刃ながら頑張った賞

最初はシビックハイブリッドに搭載され、その後プリウスよりも車体価格を安くしたインサイトに搭載してそれなりに売れました。インサイトは発売時期や見た目的にインサイトは3代目プリウスとよく比較されますが、インサイトは「後席が狭すぎる」「EV走行が出来ない」「停車中にエアコンが効かない」等々劣る点が多々ありました。その後、3代目プリウスは装備を省いて価格も安くしたLグレードを用意し、インサイトはますます苦境に立たされます。

結局ユーザーはハイブリッドシステム自体がどうとかいうところまでは考えませんから、インサイトに対する評価がすなわちホンダのハイブリッドに対する評価になってしまいます。IMAハイブリッドに対する市場の評価はなんとも微妙な感じのように思いますが、個人的にはコストまで含めればそこまで悪くないと思います。

事実、IMAシステム自体はその後搭載車種を拡大させていきました。特に印象的なのはCR-Zとフリードハイブリッドだったのでは、と思います。CR-Zはハイブリッドでエコカーながらスポーティであるという新しい価値を提供しました。IMAハイブリッドシステムはエンジンがメインなシステムなのでスポーティな車種とよくマッチします。

フリードハイブリッドは車重のわりにシステム出力が非常に小さく、いくらなんでも日常使用でも支障が出るレベルだろうという感じの車でしたが、しかし小型ミニバンでハイブリッドという組み合わせはトヨタが2015年にシエンタハイブリッドをリリースするまで唯一のものでした。

結果として、ホンダの「THSに対抗できるハイブリッドシステムが出来るまでの時間稼ぎ」という戦略(たぶん)上、IMAハイブリッドは期待以上の仕事をしたと言ってよいと思います。

ホンダ i-MMD

珍しいシリーズハイブリッドタイプのシステムです。エンジン出力は全て発電機へと注がれ、電気エネルギーへと変換、そして再度動力用モーターに注ぎ込まれます。

「絶対正義のホンダ オデッセイハイブリッドが登場!今すぐ買え!」でも述べましたが、これは潜水艦などで良く使われる構成です。技術マニアとしては非常に興味がそそられますが、自動車用として採用するにはメリットが少ないように思います。

このシステムを自動車用として考えたときに最も優れているポイントはエンジンを最も高効率で回しやすいという事です。

しかしながら、その一方で低速走行時はモーター出力のみによって駆動するため非常に大出力のモーターを搭載しなければなりません。エンジンとモーター、それぞれが車を動かすのに十分なパワーを持っていながら同時に動くことが無いと言う点で無駄が大きいです。コストも増大します。

運転の楽しさという点でもデメリットが多いです。エンジンは充電状態に応じて基本的にはポコポコと間欠運転を繰り返します。これはかなりの違和感をドライバーに感じさせるでしょう。

こういう背景があって、シリーズハイブリッドは自動車ではあまり採用されないのだと思います。

ではなぜホンダはi-MMDを開発したのか。それはEV開発への布石でしょう。EVとシリーズハイブリッドは非常に似ています。シリーズハイブリッドからエンジンを取って大容量バッテリと外部給電の仕組みを整えればEVになります(大ざっぱな説明ですが)。

後述するように三菱や日産もシリーズハイブリッドを導入している(しようとしている)のですが、その背景にはEVからの技術転用だったり、EV化だったり色々思惑があるのでしょう。今後は各国の法規制が厳しくなっているので、EVの導入が必須になりつつあります。

搭載車種

アコードハイブリッド、オデッセイハイブリッド

メリット

  • エンジンを高効率領域で回すということに関しては最も得意
  • 潜水艦みたいで格好いい

デメリット

  • エンジン動作状態はドライバーに違和感を与える
  • モーターとエンジンが同時に動作しないので無駄が多い
  • システム価格自体も高くなる傾向がある

感想

技術マニア賞

i-MMDのメリットは技術マニアを満足させる以外にメリットが見いだせません。技術マニア兼WW2系軍オタの皆様方におかれましては、バッテリ残量表示を睨みながらウルフパックで英国輸送船団を追い詰めるUボート乗りに思いをはせるのが良いと思います。

ホンダ i-DCD

ホンダがTHSに対抗すべく本気出して作った渾身の作です。分類的にはパラレルハイブリッドですが、モーターの減速比が可変であるという点が大きな特徴です。エンジン出力軸とモーター出力軸は違うギアを選択することも可能。一定速度巡航時の伝達効率という点ではMT相当でトヨタのTHSよりも優れます。

さらに、デュアルクラッチミッション装備という響きからユーザーの希望は高かったようです。が、初搭載車種のFitがリリースされるとトラブルが続出、中にはエンジン載せ替えとなるようなリコールもあり、ホンダ全体が品質問題に揺れることとなりました。

時を経て搭載車種も広がり、最近では品質問題もあまり聞かなくなりましたが、せっかくの(?)デュアルクラッチなのにマニュアルシフトモードではラグが出たりそもそも切り替わらなかったりという不満が多いようです。ただ、構造を考えれば仕方がないところで、i-DCDのデュアルクラッチはそもそもユーザーがシフトをマニュアルで操作できるようにしたのが間違いだったと個人的には思います。

ちなみに、デュアルクラッチを採用したのはホンダの軸平行ギアの製造ラインの稼働率を上げたいという事情があったとか。

搭載車種

Fit、Grace、JADE、Shuttle、ヴェゼル

メリット

  • モーター出力軸のギア比が可変なため、高速走行時もモーターアシストが効きやすい
  • エンジン回転数とモーター回転数を切り離すことが出来るためモーターアシストがさらに利きやすい
    (それぞれ都合の良い回転数で運転できる)
  • 一定速度巡航時の伝達効率がMT車と同等(最高レベル)
  • EV走行時やクリープ時にクラッチ滑りを行わなくても良い(耐久性の向上)
  • 段階式ATによる運転の楽しさ

デメリット

  • エンジンの回転数制御に自由度がほとんど無い(EV走行かそうでないかの違い程度)
  • 制御が大変複雑で変速がギクシャクしたりラグがあったりマニュアルシフトが効かなかったりする
  • 制御が複雑すぎてバリエーションを作るのが大変

感想

お前はやれば出来る子なんだからもっともっともっと頑張れ賞

個人的には、総合的に見るとTHSを凌ぐ優秀なシステムと感じます。総合の燃費で言えばTHSにはかなわない部分もあるかもしれないですが、走行性能(パワーとか運転の楽しさとか)まで含めればTHSよりも優れていると言って良いと思います。

世間的な評価がそこまで高く無いのは、やはり品質問題が効いているのでは。また、戦略の失敗というのもあると思います。搭載車種の一つであるJADEはStreamの後継として登場しましたが、値段が高すぎる、内装がチープ、後席がかなり狭い、車両重量に比べて明らかにパワー不足である点をファイナルギアの変更という投げやりな方法で解決したことによる諸々の弊害などにより販売台数は全然伸びず、青空車両保管場で新車が山のように眠っている写真を撮られたりしています。

グレイスは個人的には悪くない選択肢と思いますが、もはや近年の日本で小型セダン車への需要自体が低迷しており、これもイマイチパッとしない気がします。シャトルもまた悪くないと思うのですが、JADEやFREEDなどといった似たような車種に重なる感じですし、ただのデカいFITという気もします。そのあたり、個性が見えてこないためか、市場の評価は今一つ。Fitは品質問題があるし、車種の性格から考えてもなるべく安いグレード(つまりガソリン車)に注目が集まるでしょう。

…と言った感じで、i-DCDでヒットを飛ばした印象深い車種が無いのが私が思う「戦略の失敗」です。IMAハイブリッドの時も、付け焼刃でインサイトを作ってしまったのが失敗だったように思う(私はインサイトすごく好きです)。

結局ほとんどのユーザーはハイブリッドシステムとして優れているか、なんて観点では見ず、車種ごとによって良し悪しを判断します。いたずらに車種を増やしてターゲット層を重複させてしまうよりは、開発リソースを集中してStreamのちゃんとした後継車種を作るべきだったと私は思います。

この優れたシステムをさらに進化させてヒットを飛ばす車種をぜひとも作って頂きたいですね。

スバル ハイブリッドシステム(正式名称無し?)

CVTと組み合わせたハイブリッドシステムです。トヨタと協力してもらい開発したらしい。構成はパラレルハイブリッドでホンダのIMAハイブリッドと似た構成を採りますが、エンジン-CVT間とCVT-出力軸間にクラッチを追加してEV走行や停車時の発電も行えるようにしてあります。

搭載車種

インプレッサ XV、インプレッサ ハイブリッド

メリット

  • シンプルであるためにコスト、重量、容積を抑え、信頼性を高められる
  • 高速巡航時の効率が(ハイブリッドシステムの中では比較的)良い
  • EV走行や停車中の発電が可能
  • モーター出力がCVTを通過するのでモーターアシストが効きやすい(i-DCDほどでは無い)

デメリット

  • CVT自体のロスが大きい

感想

模範解答賞

ハイブリッドシステムを作るとき、正攻法で作ればこういう感じになるのだと思います。すなわち、エンジンと変速機の間にパラレルに発電・動力兼用のモーターを差し込み、EV走行と停車中発電を実現するために二つのクラッチを用意するという考え方です。

スバルの場合は高性能な4WDという売りがありますから、トルク配分の自由度が低いE-4WDなどの構成は取りたくなかったのでしょう。(そもそも、E-4WDのノウハウがない)

すると、変速機の出力側以降は従来と同じような仕組みになっていないといけないわけで、そこから逆算していくとこのような構成にたどり着きます。

日産 S-HYBRID

セルモータとオルタネータ(発電機)が共通になっているというところ以外は普通の車と違うところはほとんどありません。アイドリングストップからの始動時にセルモータをちょっと余計に回して走り出しを若干アシストしてやろう(アシストと言うか、フリクションロス分を取り戻す程度?)という発想です。バッテリも普通の鉛蓄電池ですから、アシスト量もたかが知れています。回生ブレーキも無し。

そもそもアイドリングストップ車には大きなバッテリー(鉛蓄電池)が搭載されますが、これはアイドリングストップそのものがバッテリにとってかなりの負荷になるということです。そんな状態で200A前後も流れるセルモーターをブンブン回すわけにもいきません。

搭載車種

セレナ

メリット

  • ガソリン車とほぼ同じコスト

デメリット

  • ガソリン車とほぼ同じ燃費性能

感想

優良誤認賞

先に述べたようにアイドリングストップに毛が生えた程度のシステムですので、これをもって「S-HYBRID」などとあたかもハイブリッド車であるように表現するのは良くないと思います。そもそも(マイクロ)ハイブリッドシステムの枠には入らないと思っているのですが、このあたりの事情を知らずにセレナはハイブリッドだと思っている人はいらっしゃるかと思うので本記事でも書きました。

ちなみに後述するように、これよりもはるかに本格的なハイブリッドシステムを搭載したスズキのエネチャージでもハイブリッドとは表現していません。

ハイブリッド車が流行り始めてミニバンのシェアもVOXY・ノアに押され始めたあたりで営業・経営的な側面から何とか売りを作ろうと画策した結果なんじゃないでしょうか。想像ですが…。

日産 1モーター2クラッチ式ハイブリッド

そもそも日産はLEAFに見られるように電気自動車に力を入れていてハイブリッドへの取り組みは他社と比べると、事業規模の割にはそこまで熱心ではありませんでした。それでも一応はラインナップにハイブリッドを充実させたかったのか、もしくはEVとガソリンの間を埋めるためには結局ハイブリッドが中期的なビジョンでは必要だと思ったのか、良くわかりませんがS-HYBRIDの次にこの1モーター2クラッチ式ハイブリッドを投入しました。

「2クラッチ」と名前を決めた所はいいと思います。デュアルクラッチミッションのドライブフィールであるように錯覚させるために「デュアルクラッチ」と表記することも出来たとはおもいますが。それでも、世間では「おっ、デュアルクラッチミッションのハイブリッド車が登場したのかな?」などと反応している人は居ましたけど。

詳しい記事は以下です。

日産の1モーター2クラッチ式ハイブリッドを調べた

論文を見ると、従来のハイブリッドシステムでは「ダイレクト感の無さ」「トルクコンバータによる伝達効率の悪化」という二点を改善したと述べており、THSやスバルのハイブリッドシステムに対抗しているような印象を受けます。

しかしながら、変速や走行中のエンジンの起動・停止に伴うトルク変化をスムーズなものにするために半クラを多用した制御を行っているようです。トルクコンバータでは燃費が悪化すると言えども、ロックアップしてしまえばクラッチ式と変わらないわけで、結局は半クラを多用することによるエネルギーロスと流体継ぎ手としての役割を果たすトルクコンバータによるエネルギーロスのどちらがマシなのかという話にしかならず、「トルクコンバータによる伝達効率の悪化」を改良したと言い切るのはどうなんだろう…とモヤモヤするところです。

搭載車種

フーガ、スカイライン、エクストレイル、次期セレナ?

メリット

  • スバルのハイブリッドシステムとほぼ同じ
  • 減速機での伝達ロスが小さい(CVTのロスが無い)

デメリット

  • クラッチ式ATなので変速が若干ギクシャクすることが予想される
  • 半クラ多用による伝達効率の悪化とクラッチ寿命が短くなること

感想

やる気あんのか賞

技術マニア的には全然面白くないです。もちろん、面白いか面白くないかで経営方針が決まるわけでは無いのですが、日産は事業規模が大きく、かつ、ハイブリッドでは後発と言ってよいメーカーだと思います。その日産がこれか…と残念に思います。私に言わせればこれはスバル式ハイブリッド(特にスバルを意識しているわけでは無いと思いますが)のモディファイです。論文の切り口からそう感じます。もっと大きいメーカーなのだから画期的なシステムを作って欲しかった。

ただ、日産の戦略としては明らかに自動運転やEVに注力といった感じなのでパワートレーンの一つや二つ何か変わったところでそこまで経営に対するインパクトは無いと割り切っているのだと思いますが。

日産 Pure Drive e-Power

日産のシリーズハイブリッドです。教科書的なシリーズハイブリッドで、ホンダi-MMDのようにエンジン出力直結クラッチなどは設けません(想像だがその可能性が高い)。また、変速比も固定と思われます(想像だがその可能性が高い)。出力直結クラッチがないので、全速度域で電力〜動力の変換ロスが生じます。一定速度巡航したときの燃費性能は普通のガソリン車に敵わないことが多いでしょう。

これは明らかにEV(リーフ)からの技術転用です。i-MMDの項で述べたとおりEVとシリーズハイブリッドは非常に似通っています。これも乱暴に言えば、リーフのバッテリを減らして小型エンジンを搭載すれば本方式になるわけです。

先陣切ってEVを広めた日産ですが、思うようにバッテリ方面で技術革新(エネルギー密度の向上、コストの削減など)が無かったためか、結局は間を埋めるためにハイブリッドが必要という判断になったのだと思います。その結果、1モーター2クラッチ式を開発しましたが、小型車に関してはリーフで培ったEVのノウハウがあるためそちらの方を採用したという感じでしょうか。面白くないですね。

搭載車種

次期ノート、次期Juke(と言われている)

メリット

  • i-MMDと同じ

デメリット

  • i-MMDと同じ(ただし高速巡航時の燃費性能が劣る)

感想

守りの姿勢賞

結局日産はハイブリッドの先にはEVがあり、ハイブリッドは過渡的な技術と考えているのではないでしょうか。だからハイブリッド関係技術への研究開発投資を渋っているのでは。個人的にはEVが普及するのはまだ先の事だと思います。下手したら自動運転の方が早いんじゃないかと…。

まあでも、私が日産経営陣の立場だったとしても金かけてハイブリッド技術に今から取り組むよりだったらこういう感じでEVの流用を指示すると思いますね。私が不満なのは技術マニアだからというだけの話であって合理的な理由は無いです。

三菱 プラグインハイブリッドEVシステム

アウトランダー PHEVに搭載されているシステムです。構成はi-MMDに非常に似ており、高速走行時はエンジン出力を機械的にホイールまで直結させます。i-MMDとの違いは当然ながらプラグインハイブリッドであるということです。具体的には、後輪にもモーターがあって、バッテリ容量が大きくて、外部から充電できるというあたりが違います。

三菱がシリーズハイブリッド方式をとるのも、EVへの布石にしたいからだと思います。

搭載車種

アウトランダー PHEV

メリット

  • i-MMDと同じ

デメリット

  • i-MMDと同じ

三菱がんばれ賞

もはやハイブリッドとは何も関係ない感想なのですが、頑張ってほしいと思います。個人的には三菱自動車は二度と乗りたくないと思っているもののそこまで嫌いでは無く(矛盾しているようですが)、むしろ頑張ってほしいです。なぜならばディーゼルでスライドドアなミニバンであるD:5、SUVなPHEVであるアウトランダーなど、他メーカーが作らないような隙間車種を突いてくるのが近年の三菱の良いところだと思っているからです。

スズキ エネチャージ/S-エネチャージ

マイクロ/マイルドハイブリッドの本命だと思います。

ここまで説明したようなハイブリッドシステム(S-HYBRID除く)はシステム自体が大規模かつ高コストでしたので、ハイブリッドシステム価格分を燃費節約分でペイするのも大変で、そもそもペイできないようなシステムも多くありました。スズキの軽自動車に搭載されるエネチャージは、その価格帯からも分かるようにちゃんと燃費向上分でシステムコストの回収を狙う、自己満足でない実用的なハイブリッドシステムと言えます。

エネチャージとS-エネチャージの違いはセルモータによるアシストがある(S)かないかの違いです。

エネチャージとS-HYBRID(or通常のガソリン車)が違うところは、リチウムイオンバッテリの有無だけですので、結局充電容量が違うだけではと思われがちですが、リチウムイオンバッテリは鉛蓄電池と比較すると急速充放電が可能という特徴があります。

最近の自動車はハイブリッド車に限らず皆充電電流制御を行っています。これは、常時オルタネーターに一定の負荷をかけるのではなくて、加速時には弱い負荷を、減速時には強い負荷をかけて減速時のエネルギーをなるべく回収してやろうという制御です。

鉛蓄電池は短時間で一気に充放電するのが苦手な電池ですので、減速時に一気にエネルギーを生み出してもそれを充電しきれません(つまり、オルタネーター負荷を大きく出来ないということ)。これがリチウムイオンバッテリであれば、鉛蓄電池よりは素早く充電できるので、そもそも回収できる量が違ってきます。

ですので、リチウムイオンバッテリの搭載は単なるバッテリ容量の拡大だけではなくて回収できるエネルギーの量も異なるということです。

さらに言えば、通常のアイドリングストップ車では鉛蓄電池に負荷がかかるために大きなバッテリを積む必要があり、さらに寿命も短くなりがち(酷い場合は2年とたたずダメになる)で、アイドリングストップによって節約したガソリン代がバッテリ代で吹っ飛ぶということもあります。が、エネチャージであればそのような自体は極力回避できます。

ちなみに、ダイハツがS-エネチャージと同じような方式のマイクロハイブリッドをリリースする可能性があるとのことです

搭載車種

スズキのほとんどの軽自動車車種

メリット

  • 低コストで手堅く燃料費を節約できるハイブリッドシステム
  • 構造がシンプルで故障の心配があまりない

デメリット

  • 燃費性能向上効果は限定的

感想

実用賞

いたずらに複雑で大掛かりなシステムにしようとせず、こういった手堅い方法を取るのはさすが新興国市場で戦ってきたスズキといったところでしょうか。

また、日産のS-HYBRIDと比較しても「ハイブリッド」とは言っていないあたりに非常に好感が持てます。システム的にはマイクロハイブリッドもしくはマイルドハイブリッドと呼ばれる部類のもので、別にハイブリッドと言っても差し支えない技術です。しかしながらスズキは「ハイブリッドと呼称すると消費者が誤認するから」とストイックな姿勢でいることにも好感が持てます。頑張れスズキ。

マツダ i-ELOOP

これはハイブリッドではないのですが、マツダだけ独自技術に触れてないですし、シンプルなシステムであるS-HYBRIDを取り上げたのでこっちも取り上げようと思い書きました。

マツダのハイブリッド車はアクセラ一車種のみですが、この中身はトヨタのTHS-2です。マツダのハイブリッド戦略はスズキと同じようにマイクロ/マイルドハイブリッド方面からの導入と言われています(昔の話なので最近は方針転換しているかもしれませんが)。

スズキのエネチャージとよく似ており、デメリット・メリット等も同様の傾向となります。

エネチャージと異なるところは、バッテリとして電気二重層コンデンサ(スーパーキャパシタ)を搭載していることです。電気二重層コンデンサは鉛蓄電池やLi-ion電池と比較して出力密度(W/kg)は高いですがエネルギー密度(Wh/kg)は低いという特徴があります。電気の出し入れは得意だけれども貯め込むのは苦手ということですね。どちらも一桁~二桁くらいの差があります。

これを例えるならば、入り口は小さいけどデカい部屋(Li-ion, 鉛蓄電池)、入り口は大きいけど小さい部屋(コンデンサ)の二つがあるようなものです。このような二つの部屋に対して一定時間(減速時)に大量の荷物(電力)を詰め込むときにどっちが有利かという見積もりは中々難しそうです。たぶん、Li-ionの方が有利なのではと思うのですが…。

ちなみに、i-ELOOPと同様の効果を狙ってコンデンサをバッテリに並列に接続するのは意味がありません。一昔前にコンデンサチューニングとかいうのが流行りましたね。燃費向上のためには充放電制御が不可欠です。すなわち、減速時にオルタネータに負荷を与えて(=キャパシタに充電させて)、バッテリよりも優先的に放電させるという制御が必要です。

搭載車種

デミオ、アクセラ、CX-3、CX-5、アテンザ

メリット

  • スズキ エネチャージと同じ

デメリット

  • スズキ エネチャージと同じ

感想

特に言うこと無い賞

特に言うことがないのでマイルドハイブリッドの発展について説明してみます。マイルドハイブリッドは進化して現状の12Vシステムから48Vシステムになるだろうと言われています。電圧を上げてより強力なパワーを得ようという発想ですね。パワー[W]は電流と電圧の積なので電流を上げても同じ効果は得られるのですが、電線を細く出来たりインバーターを小さくできたりと電気回路的には得することが多いです。

ただ、あまりに電圧を上げると安全対策でコストがかさんできますから、そのあたりの都合を踏まえて48Vになったのでしょう。

この場合も、回生ブレーキとして追加のモーターなどを用意するわけではなく、従来のオルタネーターが大きくなったような構成を採ります。すなわち、アシストはベルト経由で行います。電装品も降圧した12Vラインで動作することになるはずです。

また、エンジンの動作/停止制御についても、現在のアイドリングストップからさらに進んだ制御が計画されています。たとえば、BOSCHだったかVWだったか、下り坂でエンジンを停止させたり、さらに一歩進めて地図データから下り坂に差し掛かる直前でエンジンを停止させたりという制御を行う実験をやっていたと記憶しています(ソースは失念)。

実際には車が動いている時に油圧が効かなくていいのか?とか、下り坂だってさらに加速したいケースはあるわけで、そういう時に対応できるのか?とかさまざまな問題があるかとはおもいますが、まあフルハイブリッドする以前にもまだまだやれることはありそうですね。

まとめ

今回の記事ではハイブリッド車の構成について解説しました。

色々良し悪し等書きましたが、結局のところそもそもハイブリッド車に乗って元とれるのか?というのは微妙なラインですし、あまりこだわらずに好きな車に乗ればいいと思います。私のような技術マニアだけがこだわればいいんじゃないかと思います。という雑な結論で終わりたいと思います。ご査収ください。